『クラウディアのいのり』 村尾靖子
先日の実演会にて読んでいただいた一冊です。 題名だけは知っていましたが、内容を初めて知って驚きました。 以前、テレビドラマになっていたお話だったからです。 シベリアに抑留され、そのままスパイ容疑をかけられて帰国できないまま、ロシア人として暮らしていた日本男性。 どこか陰のある彼に惹かれ、結婚しともに暮らしてきたロシア人女性、クラウディア。 死が二人を分かつまで、このまま一緒に暮らすのだろうと思っていた二人ですが、ある日思いがけない知らせがとびこんできます。 日本で、彼の帰りをずっと待っている家族がいると・・・。 聞きながら、テレビドラマの映像を思い返していました。 帰国した夫と抱き合う、老いた妻の映像です。 妻と、生まれたばかりの子どもを残して戦地に赴いた夫。 夫の死を知らされても、生存を信じて何十年も待ち続けた妻。 その妻のもとに、夫を返してくれたロシアの心深い女性の存在。 天涯孤独のクラウディアは、夫が日本に帰ってしまえば、またもとのひとりぼっちに戻るのです。 それなのに、なぜ、あえて夫を手放すことができたのでしょうか。 「他人の悲しみのうえにわたしだけの幸福を築くことはできません」 クラウディアは知っていました。 夫が夕焼けを見ながら故郷の歌を口ずさんでいたことを。 日本の妻がどれだけ彼の帰りを待ち望んでいるかということも。 このお話は、実際にクラウディアさんが夫にあてて書いた手紙(詩)をもとに書かれています。 自分のことをあとにして人の幸せを願うということ、本当の愛とは何か、子どもたちの心にもきっと届くと思います。 | ||
戦争後のロシアで思いもよらない出会いをした日本人男性とロシア人女性。長い年月を共に支えあい、ひたむきに生きた二人の愛はかけがえのないものに・・・。 |