みみずの女王
4年生への読み聞かせで、『村岡花子童話集 たんぽぽの目』に収録されている『みみずの女王』を読みました。
絵本ではないため、ちゃんと聞いてもらえるか少し心配でしたが、それは取り越し苦労というものでした。
はじめに、「絵がないので心のなかで想像しながら聞いてくださいね」、と言って読み始めたところ、数人の子どもたちが目を閉じて、じっと聞いてくれているのです。
目を閉じてまで・・・!と、子どもたちのあまりの純粋さに嬉しくなりながら、読みました。
目を閉じていない子も、しっかり前を見て聞いてくれていました。
このお話は、フト子さんという大きくて立派なみみずと、せきれいの親子の物語です。
大きくて立派なことを鼻にかけて、友達のいないフト子さん。
いつもいばっているものだから、危険がせまったとき誰も教えてくれませんでした。
周りのみみずがみな土に潜っていったのを、わたしが立派だからだわ、わたしがみみずの女王よ、と得意になるフト子さんに、せきれいのくちばしが襲いかかります。
せきれいのお父さんは、雛たちのために太いみみずをさがしていました。
重くて強いみみずの力にくじけそうになりながら、雛たちのために、ふんばってふんばって、やっとのことでみみずを地面からひきはがします。
そうして巣にもちかえって、家中で大喜びしておいしく食べました。
「家じゅうの者たちが声をそろえて、立派なみみずだ、立派なみみずだとほめるのを、フト子が聞いたらどんなにお得意になっていばったことでしょう。
惜しいことには、そんなにみんながほめているのが、フト子にはもうちっともわかりませんでした。」
なんともいえないお話ですね。
こどもたちも微妙な表情をしていました。一人の子が「ぼく、怖い話苦手だよ」と感想をもらしました。
それを聞いて、はっとしました。
この話はみみずの立場から見ると怖い話ですが、せきれいの親子にとっては嬉しい話。
そして人間にも無縁の話ではありません。
人間こそ、たくさんのものの命をいただいて生きているのですから。
読んだあとに、うーんと考えてしまうお話、なんだかよくわからないけれど心に残る話。
単純でわかりやすいものが多い今だからこそ、新鮮な感じがします。
朝の連続ドラマ「花子とアン」でブームになったおかげで、村岡花子さんや白蓮夫人の関連書籍がでまわるようになって、嬉しいかぎりです。
「みみずの女王」というお話も、朝ドラでとりあげられていなければ、きっと読むことはなかったでしょう。
テレビの影響力とはすごいですね。